個人創作サイト「Sacrilege」小説投稿サイト「小説家になろう」その他創作全般についての呟き。不定期更新。
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カイン・コーラス編です。
日本語おかしい部分見つけたけれど、敢えてそのままで。
昔の恥は恥として。
これ単体で読めますよ。
日本語おかしい部分見つけたけれど、敢えてそのままで。
昔の恥は恥として。
これ単体で読めますよ。
あまりにも幼くて弱かった。
そんな自分を打ちのめす雨、苦しみの雨。
パシャン、と足元で水がはねた。
少年が、同じ年頃の少年を背負って歩いている。
同じような体格の人間を背負うのは容易じゃない。それも、意識が朦朧としているような人間を背負うのは。
相手がしがみついてくれないのだから、何度も背中の上でずり落ちて、足を引きずる。
その上に容赦なく降り注ぐ雨。
せめて、と背中の少年に上着をかぶせるけれど、それももうぐっしょり濡れて用を足さない。
走ることはできない。
走ったら落としてしまう。
それに、雨で冷え切った体は今にも力尽きてしまいそうで、ずるずると足を引きずるのもやっとだった。
「…すぐ、お医者様のとこ連れてくからね…すぐだよ。すぐに…」
何度も囁くように繰り返すのは、背中の少年に対してか、自分を励ますためか。
今よりもっと幼いころから、ずっとそばにいた。
大切な友人、兄弟のように育って、かけがえのない相手。
背中の上の少年は昔から体が弱かったけれど、彼の両親が死んでから一層酷くなった。
遠くへ出かけることなどできない彼が、どうしてもと頼むから。
事実を甘く見ていたのだろう。
遠くに行って疲労が溜まれば具合だって悪くなる。
しかも、そこに運悪く降ってきた雨。
気ばかり急いて、先に進まないもどかしさ。
涙で視界がぼやける中、何とか進んでいった。
雨と涙で霞んでいて、気がつかなかった。
すぐ目の前に、黒い人影。
「…どうしたの?」
静かな声は、優しいのに険しかった。
白い天井、白い壁。
フローリングに立ち尽くしていると、言いようもない不安を感じる。
この白い世界は、冷たく自分たちを跳ね除けてしまうかのように思える。
少なくとも、救ってくれるようには思えない。
そんなことを考えているとふいに頭を撫でられた。
振り返るとそこにいたのは、先ほど自分たちを見つけてくれた少年。
少年と言っても自分たちよりはいくらか年が上なのは間違いない。
「お友達は少し寝ていれば大丈夫だって」
よかったね、と笑う表情は柔らかくて、少女のような可憐さを持ち合わせている。
「…ありがとうございます。助けてくれて…」
「どういたしまして」
彼は安心させようとしてかずっと微笑んでいてくれたけれど、笑う気はしなかった。
気分が重くて、笑うどころじゃなかった。
「それじゃあ、俺は用事があるから。後のことは先生に頼んどいたからね」
もう一度頭を撫でると、そうして少年は去ってしまう。
早速、エリオスの元へと向かう。
診療所の奥へと入ると、寝台の上で身を起こしている灰色の髪の少年と、白衣を着た医師。
「ごめんね…」
少年は謝った。
「ううん、僕が止めなきゃいけなかったんだ…ごめんね、ごめん…」
少年の声を聞いたらどっと力が抜けて、寝台の横に座り込んでしまう。寝台の端には腕を着きながら。
医者は何も喋らない。暫くはずっと、したいようにさせてくれた。
安心すると、思い出す。
先ほどの少年のこと。
まだ子供の癖に随分と大人びていた。余裕がある、というのだろうか。
「あの…さっきの人…」
訊ねると医者は頷いてみせる。
「お役人だよ。まだ、随分若いんだけれどね」
名前を聞くことすら忘れていた。
「知らないの? 結構よく名前聞くよ」
そう言ったのは、ベッドの上の少年。
彼が知っているということは、確かにそこそこ話題になっている人物なのだろう。
しかし、それよりも。
役人ということは、当然のことながらしっかりと教育を受けた人間だろう。
自分たちのような下層の人間とは違う。
最低限のことしか学べない人間とは違う。
交渉できるだろうか、自分の望みの為に。
雨の中、唐突に現れた人。
降りしきる雨に、溶け込んで。
空間を切り取って絵にしたかのように違和感がなく、気付くことができなかった。
幾千も降り注ぐ雨のしずく、その中の一粒であるかのように。
「お願いが、あります」
無力な自分を打ちのめしたのは冷たい雨。
「僕に、勉強を教えてください」
無力な自分を実感させたのは温かな雨。
もっと強くなる。
賢く、冷静に。
大切な人を、この手で守ることができるように。
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