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This blog is Written by 神月きのこ,Template by ねんまく,Photo by JOURNEY WITHIN,Powered by 忍者ブログ.
個人創作サイト「Sacrilege」小説投稿サイト「小説家になろう」その他創作全般についての呟き。不定期更新。
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絵にしろ小説にしろゲームにしろ、創作好きのなりチャッター。
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05/04 トーマ
はい、ここ数日に及びました、過去のお子様小説。
今回で一応ラストでございます。

トリを飾るのは、トーマ・エヴァンズ。
恐らく一番少年誌の主人公っぽい男。
ではいってみましょうー

朝靄の中、軽快な足音が響く。
 緩やかな傾斜を下るとき特有の短いリズムを刻む。
 狭い路地の両脇に立ち並ぶ商店は、品物を広げて開店の準備中。
「おう、今日は随分早いじゃねえか」
 1人の商店主が鷹揚に声をかけると、走り続ける少年は大きく手を振った。
「父さんのお客さん迎えに行くんだ!」
 商店主が道路に出した木箱を軽く飛び越えながら答える。
「ほぉー、んじゃ、船待つ間にこれでも食いな!」
 既に更に下方へと遠ざかっている少年に向かってりんごを投げる。
 それを振り向いて受け止めると、少年はりんごを握った手を高く掲げ、「ありがとう!」と笑った。


 大陸の突端に位置するこの町は、近隣で一番という規模の港があり様々なものが集まる。
 港から上がる道に位置する商店には各地の穀物、工芸品が並ぶ。
 そして、船で運ばれてくるのは人も同じである。

 少年は、先ほど商店主からもらったりんごを齧りながら海を眺める。
 靄がかかって遠くまで見通すことはできないが、うっすらと影が見える。
 その影は徐々に濃く、大きくなっていって対象物が近付いていることを告げる。
 低い汽笛が大音量で響き渡る。
 思わず耳を塞ぎたくなるほどの音量にも少年は慣れたもので、りんごをもう一齧りすると立ち上がった。
 ゆっくりと、確実に停泊場へと近付く船が、自然に見えるような流れの中で止まった。
 いまだにゆらゆらと波に揺られる船から梯子が下ろされる。
 少年は、梯子の横で降りてくる人を待った。
 朝も早いため、客はまばら。
 しかし、待っている人物はなかなか現れない。
「…まーた船乗り遅れたのかー、アドラーさん…」
 少年が呟いた時。

「また、とは随分だな」

 不機嫌な声が降ってきた。
 ようやく現れた男は、隣に白髪の青年を引き連れている。
「乗り遅れちゃいないけど、船で寝こけてたんだよなー」
「お前も人のことは言えんだろう…でかいいびきをかきおって」
 何度も見たことがある客人と、見たことのない青年。
 青年は人好きのする笑みを浮かべた。
「どうも、初めまして。…ウォルト・ラヴェールです」
 銀でもない、灰色でもない。混じりけのない真っ白の髪が揺れるのに、思わず少年は目を奪われた。
「えっ…と。俺はトーマ・エヴァンズです。はじめまして、ウォルトさん!」
 一瞬言葉に詰まりながらも、少年らしい明るい笑みで応じる。
 いつもの客人が、別の人間を連れてくることなど予想もしなかった。
 人嫌い、というのとはまた違うが、研究室に引きこもり他者との関わりをあまり持たない人物であったから。
 自分から敢えて誰かと関わりを作ろうとする人間でないことも知っている。
 それが何故、今回に限って。
 父の友人とも思えないような青年を連れてきたのだろうかと疑問に思いはしたが、それを問うことはしなかった。




「ご苦労様。では、訓練をしていなさい」
「はーい!」
 出迎えた父の顔は、優しくて、息子への慈愛が見て取れる。
 言われたとおり、少年は走って外へ。そのときに、木でできた剣を持って行くのも忘れずに。
「…元気なお子さんですね」
 白髪の青年が微笑ましそうに言う。
「ああ、元気がありすぎて困ることもあるが…」
 穏やかな表情に苦笑が混じる。
 どこか違和感を感じるほどの静かな時間が流れている。




 少年は、1人剣を振っていた。
 言われたことを欠かしたことはないが、それでも1人の訓練は退屈である。
 時々、町の剣術師範に相手してもらうこともあるが、いつだったかその師範のことも負かしてしまった。
 少年は退屈していた。
 これ以上何をすればいいのか分からない。
 人の行き来が多いとはいえ、狭い町の中。
 その中で少年より強い者はもういない。
 父は自分を自慢の息子だと言う。
 それは嬉しかったし、誇りだった。
 なのに、何がこんなにも不満なのか。
 少年は自分でも分からずに苛立っていた。
 その苛立ちをぶつけるようにがむしゃらに剣を振っていると、人の気配。
 そちらを振り返ると、立っていたのは父と話しているとばかり思っていた青年だった。
「なんか、投げやりだねぇ」
 穏やかに笑いながらの言葉に、咎めているような響きはない。
「そんなことな…」
「退屈?」
 否定しようとすると間髪いれずに投げかけられる問い。
「……退屈、です」
 見透かされている。
 幼い誤魔化しなど到底通用しないだろう瞳。
 反論することを諦める。元より、少年もずっと、誰かに訴えたかったのだろう。
「それじゃあ、俺の相手してくれるかな。退屈凌ぎになるかは分からないけど」
 そして、青年の申し出に一も二もなく頷いた。




 外から、剣のぶつかり合う音が聞こえる。
 防具をつけていないから、使っている剣は木でできている。音も重く鈍い。
「…何故、奴を連れて来いと…?」
 客人は外を見やりながら問う。
 少年の父は、目を伏せ、そして穏やかな笑みを口元に引いた。
「あいつの今後の為…と言えば、納得するか?」
「そんなことは聞かずとも分かる。理屈を言え」
 客人の声には、いくらか苛立ちが混じっている。
 まるで台詞の棒読みのような喋り方を常にしている彼にしては珍しいことだが、当人が気付いているかもわからない。
「…時間がない。じきに私も……戦えるものは皆、戦に駆り出される」
 一際大きく鈍い音が外で聞こえたきり、静寂が訪れる。
 客人は、予想していたその答えに目を細めた。
「…終わったようだな」






「大丈夫?」
 膝をついた少年の傍らに屈むのは白髪の青年。
 顔を上げた少年は、嬉しそうに笑った。
「お兄さん、すげえ強いな!」
 圧倒的な力の差を見せられた。
 ここまで叩きのめされたのは、何年ぶりだろうか。
 しかも、青年はまだ手加減していたのに、だ。
 負けた少年の瞳は、面白い玩具でも見つけたかのように輝いている。
「俺なんか、まだまだ大した事ないよ」
「これで!? もっと凄いのがいるのか?」
 興奮の為か、丁寧な口調で話すことを忘れている。
 上気した頬、流れる汗も清々しいと思える。
 長く忘れていた快感だ。
「まだまだ沢山、ね。俺も敵わない人はいるよ」
 息一つ乱さないままの青年が答えるその言葉は、少年にとっては途方もない世界のことのように思える。
 自分が今まで知っていた世界の何と狭いことか。
「やっぱり…色んなとこ、見て回んないと分かんねえもんだなぁ」
 もっと、知りたいと思った。
 頭の中に詰め込むのは苦手だ。
 経験でもって知識にする方がずっと楽しく、そして身につく。


 例えそう仕向けたのが、自分の意思の及ばないところでも。
 知らない間に、後悔と嘆きの種が撒かれていることも。
 気付かないうちに、少年は決意を固めた。
 世界を自分の足で歩いて回る。
 尽きぬ楽しみを求めて旅をする。
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