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This blog is Written by 神月きのこ,Template by ねんまく,Photo by JOURNEY WITHIN,Powered by 忍者ブログ.
個人創作サイト「Sacrilege」小説投稿サイト「小説家になろう」その他創作全般についての呟き。不定期更新。
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絵にしろ小説にしろゲームにしろ、創作好きのなりチャッター。
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ムチャ企画、再募集中ですね。
ちょっと迷いつつ…書けそうもないので断念。

その代わりと言っては何ですが、昔書いたお子様ものをここに再アップしていこうかと。
なりきりチャットで出しているキャラ設定で書いたものです。

まあそのなり茶は現在私にとって鬱になる地雷だったりもしますが。

先に説明しておきますと、そのなり茶では私は4人のキャラを登録しておりました。

シェス・カートライト
トーマ・エヴァンズ
カイン・コーラス
レン・クロード

彼らが10歳の頃にした決意というのを、2年ほど前に短編でそれぞれ書いています。

今日はレンの話を載せます。
ただこのレン、黒翼のレンではありますが設定は色々違います。

・人間である
・ウォルトの弟である
・名家の跡継ぎである

色々違和感はあると思いますが、よければ。





 笛の音が聞こえる。
 高く、どこまでも遠く響くかに思えるその音は、しかし一歩屋敷から出れば聞こえなくなってしまう。
 拙いながらも切実に、演奏者の内面を写し取るかのような音色。
 それは、包み込む結界に守られて。
 誰にも害することを許さないように。

 その音に思いを馳せながら、青年は寂しげに微笑んだ。
 不満と納得と諦めと。
 目ざとくその表情を見つけた女は、小さくため息をつく。
 まだ、大人になりきっていない青年。
 少年といってもいい年頃の彼は、女が初めて産んだ子供である。
 妹や弟がいるからか、負い目か、青年は年の割にひどく大人びている。
「分かっています。俺が、断るはずないでしょう?」
 母上、と青年が女を呼ぶ。
 女は答えることができなかった。
 平静を保つのに精一杯で。
 今は何を言っても言い訳になると思って。
 ただ、強く衣服を握り締めた。



 笛の音が聞こえる。
 その中心にいるのは、まだ小さな少年。
 細い指で、小さな口で奏でるのは遠い異国の歌。
 最後に一際深く響き渡り、そして途切れる。
 そっと口を離し、にこりと微笑むのに小さな拍手が重なる。
「大変上手になりましたよ」
 座っていた女が、少年の側へと近寄る。
 彼女は、少年の楽の教師である。

 少年は、複数の稽古事をさせられていた。
 将来を望まれ、宮廷仕えに相応しいように、とあらゆることを叩き込まれている最中である。

 そして、彼に関わる大人は、皆口をそろえて評している。
 聞き分けのいい子供、素直な子供。我侭を言わず、手がかからないいい子。
 この年頃の子供なら、稽古事に反抗しても不思議はないが、それどころか今よりずっと幼いころから駄々をこねたり泣いたりしたことがない。

「今日は、この後何かあるんですか?」
 教師はわが子か、孫に対するような慈愛の眼差しで少年を見る。
 聞き分けのいい子、だからこそ、不安になる。
 何か無理をしていないか、もっと子供らしく、振舞っているほうが正常なのではないか。
「いえ、今日の稽古はこれだけなんです」
 子供らしい拙い口調で、だけれどしっかりとした様子で少年は答える。


 と、その時音が止んだことに気がついた青年が部屋に訪れた。
「こんにちは、先生。今日はもう、終わりですか?」
 社交的な青年は、まず教師へ挨拶し、問いかけた。
「ええ、今終わったところですよ」
 答える教師に、ありがとうございます、と言って、青年は少年に向き直った。
「レン、今日はもう稽古終わりだろう? 兄さまと一緒に出かけないか?」
「いいの?」
 問いながらも少年はその申し出にパッと顔を輝かせた。
 見たこともないような少年の嬉しそうな顔に、教師はおやと目を瞬かせる。
 こんな子供のような表情もするのだと、どこか安堵に似た感情を抱く。

「ああ、久しぶりにお散歩しよう」
 青年の言葉を聞くと、落ち着き払った少年が急にそわそわとし始める。
「それでは、私はもう帰ります。今日も、よく頑張りましたね」
「はい先生、ありがとうございました! 俺、出かける準備してくるね」
 少年は教師が部屋を出るよりも先に、兄に告げて部屋を飛び出した。

 教師はクスクスと、笑い声を上げて。

「よっぽどお兄様のこと好きなのね」
 青年に、笑顔を見せると、青年はどこか困ったように、切なげに微笑んだ。
 その様子を不思議に思いながらも、深く問うことはせずに退出する。




 兄弟二人連れ立って、やってきたのは町外れの丘。
 吹き抜ける風に揺れる草木、そこは兄が以前見つけて、連れてきてくれた場所。
 あまりにも遠くて、人が訪れることは滅多にないが、風通しのいいそこは兄弟のお気に入りの場所だった。
 花を摘んで、編もうとするけれど少年にはうまくできなくて、結局兄に作ってもらう。出来上がった花冠を、頭の上に乗せられると、少年は照れくさそうに眉を寄せた。


「レン、こっちおいで」
 ふいに、座り込んだ兄が自分の膝の上を示す。
 首を傾げたけれど、少年は言われたとおりに背を向けて膝の上に座った。
 そうすると、ぎゅっと抱きしめられて、顔を上げる。
 なんでもないよ、と言うように、柔らかく頭を撫でる兄の手つきに、余計に不安を煽られる。
「兄さま…?」
 年齢の割に小柄な少年は、青年の腕にすっぽりと収まってしまう。
 真上に顔を上げると、俯く兄と顔がすぐ近くになる。

「…兄さまね、遠くに行くことになったんだ」

 静かに、淡々と。
 ただ、言い聞かせるかのような声音からは感情を窺い知ることはできない。
 だからなのか、少年はその言葉を瞬時に理解することができなかった。

「え…なんで…?」
 動揺して、それだけ返すのが精一杯だった。
「うーん、レンにはまだちょーっと難しいかなー」
「俺はそんな馬鹿じゃないですー」
 拗ねた言い方だけれど、目だけは真剣で。見上げながら、絶対に目をそらさないというように。
 誤魔化しなんかいらないから、本当のことを。訴える目に、青年は困ったように笑った。

「母様のお知り合いにね、魔術の研究をしている人がいるんだよ。」
 ポツポツと語り始める、これからのこと。

「その人のところで…一緒に、調べたいことがあるんだ」
「その人のところじゃないと…できないことなの?」
 青年は無言で頷く。
 本当は、これは真実ではない。
 だけれど、嘘でもない。
 青年は、魔術を受け付けない体を持って生まれた。
 外からの魔力を受けることもなく、自身の魔力を外に出すこともできない。
 体質を変えられずとも、魔力を外に出す術を探すことを大義名分として、異国へと出る。
 だけれど。




(あなたにレンの側にいられると困るのです)





 母の言葉が思い出される。
(あの子は、あなたに懐きすぎています。それが、どれだけ危険なことであるか…あなたには分かっていますね?)
 分かりたくない。
 分かってたまるか。
 そんな言葉を飲み込んだ。
 雨花が誰かを選ぶことの危険を、教えられ続けた。
 くだらない、そう笑い飛ばせるはずなのに、それが出来ないほどの重さが確かにある。

「ごめんね…」
 こんなことに捕らわれて、あなたを置いていなくなってしまう。
 言葉にすることは出来ないけれど、ただ、謝りたくて。
 少年の様子を伺うと、俯いてしまって表情が分からない。
 ただ、ぎゅっと握り締めた拳から、必死に何かを我慢しているのが分かる。

「大丈夫だよ…ちゃんと帰ってくるから」

「うん…」

「もう会えないわけじゃないんだから」

「…うん」

 のんびりとした語り口に相槌が応える。
「……泣いてもいいよ」

「…………」
 声は聞こえないけれど、確かに頷いた。
 後ろから抱きしめた手を、目元にもって行き涙を拭ってやる。
 きっと、後から後から溢れてきて意味を成さないと分かっているけれど。
 しかし、思えば少年がこんな風に泣くことなど今までなかったのだ。
 実は泣き虫で、甘えたい盛りで、だけれど自分にそれを禁じていた子供。
 そうしなければいけないと、誰も言わなかったはずなのに。

「レン、約束しよっか」
「約束…?」
 漸く顔を上げた少年の頬は既にべったり濡れていて。
 青年はにっこりと微笑みかけた。

「そう、約束。今度会うときを決めとこう」

 そうしたら絶対会えるだろ? 言われて少年は驚いたように目を見開くけれど、すぐに満開の笑みで応えた。
「うーん、それじゃあね、レンが、お城に上がったら、帰ってくるよ。お祝いに、ね」
 役人になるよりももっと早くに、きっと少年は小姓としてでも城に上がる。
 それは、そう遠い未来ではないことを知っているから。
「……うん。それなら、きっとすぐにできるよ」
 本当は、幼いこの少年には1年や2年は途方もなく長く思えるのだけれど。

「それじゃあ、行く前にもう一度、レンの下手な笛聴きたいな」
「下手じゃないもん」
 拗ねたように言いながらも少年は立ち上がって青年の手を引く。
 明るく笑って、帰路に着く。




 高く、高く…天に上るような笛の音は響く。
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