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以前サイトでアップしていたお題小説です。
「思考回路はショート寸前の30のお題」から『くしゃみ100回すると死ぬって知ってる?』
突発で書いたようなお遊びネタです。
「…くしゅんっ」
ひらり。
「っくし!」
ふわふわ。
「は…くしゅっ」
パサッ…。
間欠的なくしゃみの声と共に、どこからともなく現れては舞う黒い羽。
「精霊も風邪って引くもんなんだね…」
箱ティッシュを差し出しながら、ウォルトは床に落ちた羽を拾い集める。
「ん…俺も、ひいたの初めて…」
鼻声で答えつつ、ブビーッ。
音を立てて鼻をかみ、ウォルトが差し出してきたゴミ箱に残骸を放り込む。
体調が悪いのなら、鳥の姿に戻っている方がずっと楽なはずなのだが、レンは何故かそれを頑なに嫌がる。
「俺は仕事行かないといけないけど、いい子にして寝てなよ?」
布団の中の、体ばかりは大きな幼児の頭を撫でてやり、ウォルトは外套を羽織って剣を手にした。
「ガイ爺に後のこと頼んであるし、俺もできるだけ早く帰ってくるから」
不安そうな顔をするレンに笑いかけると、手を振って出かけていく。
折りよく、今日の任務は郊外に出没した賊の討伐である。その日のうちに帰れるのは幸運だった。
ウォルトが帰ってきたのは、夕方早め、それでも想定外に遅く、茜色の空を飛ぶ鴉を見ると家路を急ぐ。
鴉が、部屋で寝ている精霊を思い出させるのか、カーと言う鳴き声を聞くとより早足に、というより走って来て。
部屋の扉を開けた時には、少し息が切れていた。
寝ているかもしれない精霊を起こさないようにと、そっと扉を閉めて部屋の中に入ろうとした時、急に黒い影に飛びつかれる。
「うわあああああんっ!」
「うっわ!? れ、レン…?」
耳元で聞こえた泣き声に、やっと状況を把握して、飛びついてきた相手の背を撫でる。
「ウォルトぉ、俺、俺死んじゃうー!!」
わああん、とやはり大声を上げて泣いたままで。
長い黒髪を軽く引いて、しがみついてきたレンと顔を合わせる。
やっと見えた顔は、涙でぐしゃぐしゃで、余計に幼い雰囲気になっている。
「ちょっと、落ち着いて…。風邪くらいじゃ、死なないよ?」
安心させようと、微笑みながら言うが、レンは首を横に振って。
「お、れ…朝、からくしゃみ、止まんなくてっ」
しゃくりあげて、ウォルトと目を合わせながらも何も見えていないようだった。
「そんな苦しくて死ぬほど辛かった?」
「くしゃみ、100回、したから…っ、死んじゃうんだ、て…!」
ウォルトの問いなど聞いちゃいない。
というか、今、変なこと言わなかったか?
視線をゆっくりと部屋の奥へと向けると、こちらの様子を窺っていたらしいがふっと目を逸らすガイ。
「…爺さん。レンに何、吹き込んだ…?」
じと、と睨むと多量の黒い羽に埋もれつつガイが溜息をついた。
あの羽の量、恐らく100回やそこらのくしゃみで出てきたものではないだろう。
片付けるのが面倒くさくなったガイが、無理矢理にでも、少しでもくしゃみを抑えさせようとしてついた嘘なのだろうが…。
「レン。100回すると死んじゃうのは、くしゃみじゃなくてしゃっくり。ついでに、迷信だから、ホントには死なないよ」
幼い子供にするように、頭を撫でてやると、真っ赤に泣き腫らした幼い子供のような眼が、きょとんと見上げてくる。
「そ、なの…?」
「そうなの」
「そ、か。よかっ…」
びええええっ
結局、今度は安心したせいか、また大声で泣き出して。
日が沈むまで、ずっと精霊の泣き声が響いていた。
>シーナさん
私も気付くまで時間かかりました(笑)
……………………………アレ?位の間隔で。
ちなみに、このお題を作った管理人様の勘違いだったそうですよー。
>山口さん
しゃっくり100回のことが頭にあるせいか、止まらないとつい数えてしまいますよねー。
実際には100回超えても大丈夫ですが、実際苦しいですね、ひゃっくり。